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Memories in Australia.[iv-viii]

この場所が、誰もいない真夜中の噴水公園でなければ、ここまで恐怖心を煽ることはなかったのかもしれない。正面にいる二人はなぜ、ここで立ち止まったのか?

幹線道路の照明を背に受けた二人は逆光となっていて、こちらから相手の表情はまったくわからない。しかし、こちらを伺い見るような動きから、彼らが僕の方を見てなにか話をしているのは疑いようないことだった。

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Memories in Australia.[iv-vii]

ブリスベン国際空港からずっと歩き続けた足は、立ち止まってなお、動いているような錯覚に陥るほどだった。時刻はすでにAM2時に向かっている。目の前に噴水が見えた。こんな夜中に、誰が見るというのだろう。水面近くから吹き出す水がわずかな照明でライトアップされ、周期的に作り出される水の造形を揺らしている。

噴水の円周を形成している構造物は、かなり大きく、ゆうに30mはありそうだ。やけに立派な噴水に感嘆しつつ、外周をぐるりと回り、道路からいちばん反対の場所に腰を下ろした。かなり遠くで自動車が走る音がする。見えるものは何もない。暗闇と、オレンジ色の街灯と、噴水自体を照らしているわずかな光、それだけ。ミネラルウォーターを口に含み、煙草に火をつけた。目をつむると、どくどくと脈打つ心臓の音が聞こえる。

僕はこれからどこへ行こうとしているのか。そもそも、ここはどこなのか。ギターケースを握り続けた手がこわばっている。背中にかいた汗が冷えて寒さを感じる。身体的状況を考えても、今はあまり良い状態とは言えない。

腰かけている噴水の構造物は、凹凸のある小さなレンガが敷き詰められており、さらに横になるには幅が狭すぎた。尻の落ち着く場所を探して座り直し、足を組み、猫背になり、寒さから身を守った。もういちど目をつむり、努めて楽しいことを考えようとし始めたとき、幹線道路の方で誰かの話し声がした。

体をひねって、声のほうを覗き見た。幹線道路のオレンジ色の照明に照らされた人物は、二人。空港とは反対の方向から歩いてやって来たようだ。

こんな時間に?酔っ払いだろうか?そのまま通り過ぎるのだろうと思った。しかし、二人は足を止め、がやがやと騒いでいた声は、ひそやかになり、なにか会話をしているようだ。もしかして、こちらに気づいていて、そして、足を止めたのだろうか。

僕は目を逸らすことができず、オレンジ色の光に照らされ揺れている二人の人物を凝視していた。

(つづきます。)
※オーストラリアに滞在した2007年〜2008年の放浪記を綴る連載企画です。

※掲載順:[序〜iv]


Text: 小佐直寛(Naohiro Kosa)

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Memories in Australia.[iv-ⅵ]

だれかに体を揺さぶられて目を覚ました。やはり無理な姿勢だったのか、体が痛い。煌々と明るかったはずの天井は、いくぶん照度が下がっているように見えた。目の前に、小柄な、黒人のおばさんがいる。派手な柄のバンダナを頭に三角巾のように巻き、度のきつそうな眼鏡をしている。手にはモップとバケツ。つまりは、空港の清掃員ということか。

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Memories in Australia.[iv-v]

21:25

ブリスベン空港に戻ると、思っていたよりも人はまばらだった。さほど気にもとめず、夜を過ごせそうな場所を探す。少しでも快適に眠れそうな場所‥待合ロビーがすぐに浮かんだ。ソファであればなお、ありがたいのだが。マップを確認し、二階に上がった。広々とした到着ロビーがあった。プラスチックの椅子が連なって配置されており、球場のスタンドのようだ。待合客はほとんどいない。

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Memories in Australia.[iv-iv]

ブリスベン空港へ到着するころには、あたりはすでに夜の気配になっていた。日中の暑さとは反対に、肌寒さすら感じる。ターミナル入り口近くにあるミートパイの露店も、すでに店じまいを始めていた。空腹を感じたので、空港の近辺で軽食を取りたい。すこし歩き始めるが、見通せるかぎり、あたりは芝生が整備されているだけの殺風景な場所だった。

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レコードコレクトの記録 vol.008 ”Lucas Santtana – The God Who Devastates Also Cures”

ブラジル新世代と称されるルーカス・サンターナが2012年に発表した本作は、あくまでもSSW作品であることを軸に置いている。「フォーテット+トン・ゼー+トム・ヨーク」と称されたように、

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