MiA V-Ⅲ

V-Ⅲ

Noosa Heads

ビーチに座って1時間もしない間に、ヌーサは比較的裕福な観光客が訪れる場所であるということに気がついた。
メインビーチ付近には、ザ・シンプソンズがキャラクターのハンバーガーチェーン店もなく、2〜3店舗が集まっているフードコートには、オーガニックを売りにしたヘルシー(で値段は高い)なフードスタンドが営業している。サーファーズパラダイスに比べて、道ゆく人もまばらで、大抵は30〜40代のファミリー層の観光客が多い印象だ。そこにきて、このお金のなさそうな異邦人はまるで異質に感じられた。どこかにアルバイトの募集の張り紙がないものか?と、フードコートをうろつく。求人がないか、と訊かずに、カウンター前でウロウロとするものだから、店員は不審に思ったに違いない。4ドル50セントを払ってホットドッグを一つ買った。「ワーキングホリデーで日本から来てるんだけど、この店で仕事はないかな。」若い店員は一瞬考えたように見えたが、結局「No.」といった。
元いたビーチに座り直し、ホットドッグを食べた。周りを見渡しても高級そうなホテルが並んでいるばかりで、安い宿泊先はなさそうだ。
リング・ノートを取り出し、今日のことを記録しておく。「Noosa Heads:高級なビーチ、適当なアルバイトなし。ホットドッグ$4.50」やはり、バンダバーグへ行くべきだろう。所持金がないので、ヒッチハイクをしてみようか。行き先を示すカードをこしらえるために、ダンボールと太めの油性マジックが欲しい。(映画の受け売りの発想だな、と内心嘲笑したが、この国では何度もそんな光景を目の当たりにしてきていた)ビーチに来る途中、歩いてくる時にモールのようなものがあったから、そこで調達しよう。つくづく、コンビニエンスストアの少ない国だと痛感する。それとも日本が便利すぎるだけなのか。
来た道を戻っていると、すこし開けた場所に行きあたった。さっきは素通りした場所だったが、すこし腰を下ろすために立ち寄ることにする。なんにせよ、暑い。ギターケース越しのT-shirtsが背中に張り付く。バックパックからミネラルウォーターを取り出す。さっきのフードコートの手洗い場で、水を汲んでおいてよかった。残り少なくなってきた25本入りのボックスから紙巻きタバコを取り出し、火を付ける。ああ、そういえばブリスベンからヌーサにくるまでの間(あるいは、シドニーからブリスベンの間だったかもしれない)の人里離れた集落に、マリファナが解禁されている村があると聞いた。そこでは、一日中、どこかしこで、ジョイントが回され、夜な夜なレイヴ・パーティが開かれているという。噂を聞きつけた日本人やヨーロッパ系のワーホリ旅行者がこぞってその地をめざすらしい。けれど、一度踏み入れたら最後、なかなか戻ってこないそうだ。その村に対して、人並みの興味はもってるが戻って来れないのはお断りだ。それは、万が一の取り締まりで検挙される可能性もあるし、ハッパにハマってしまって、抜けられなくなるのも恐ろしく思える。僕は、iPodでエイフェックスツインのアルバム”The Aphex Twin – CLASSICS”を聴きながら風に流されていく煙を目で追った。This is Legal.

彼が視界に入ってきたのはそんな時だった。黄色のT-shirtsに半ズボンの、色黒の、一眼レフカメラを構えて、あたりを撮影している男。体格をみれば、彼がアジア人であるということは一目瞭然だった。(海外にいると同胞を見つける嗅覚に鋭くなるものだ)

彼の半径10mあたりまで近づいた時、「Hi.日本の方ですか。」と声をかけた。撮影した写真の出来栄えをカメラのディスプレイで確認していた彼は、顔をあげ、こちらを振り向いた。

2021 Memories in Australia. (c)Naohiro Kosa

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エイフェックス・ツイン – CLASSICS(1995)

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