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ストーリーテリング

Memories in Australia.[iv-iii]

最初に目当てにしていた安宿がとれず、つぎに目星をつけた安宿を目指して市内を歩いていた。目抜き通りのため、たくさんの店が並んでいる。しかし、どれも個人商店のような雰囲気だ。そのなかで数軒、インターネットカフェを見つけた。手持ちは約$100ドル。この金が尽きる前に、すぐにでも仕事を探さないといけない。見知らぬ街、情報が乏しい。店内は混雑しているが、いくつか空きはありそうだ。1時間の利用は$3となっている。入店することにする。受付カウンターで「1時間」と告げ、先払いの料金を支払った。利用する座席を示すカード(プリントをラミネートしたもの)と、60分を表示しているストップウォッチを手渡された。

改めて店内を見渡し、座席についた。狭い店内。こういう時は、やたらにギターケースが主張してしまう。荷物を股に挟むような格好で席についた。両隣の利用客はそれぞれヘッドセットを付けており、画面に向かっておしゃべりをしていた。四方から、英語以外の言語が飛び交っている。イタリア語、韓国語、ヒンディー語、フランス語、どれも理解はできない言葉だ。ということは、たとえば大声で、日本語の卑猥な言葉を発しても、誰にも伝わることはないだろう。当時は、いまほどスマートフォンは普及しておらず海外との通話は、もっぱらPCを使ったSkypeが主流だった。(ケータイでは、NOKIA、Motorolaが普及していた。なお、オーストラリアでは初代iPhoneは未発売。ブラックベリーの時代。)

気を取り直して、ストップウォッチをスタートさせた。日本語で「ブリスベン 仕事 ワーホリ」と検索する。日本人のワーキングホリデー向けのポータルにつながる。ここでは、オンラインで住居と仕事を探すことができる。また、実店舗も存在していて都市であれば大抵、日本人向けのエージェントがあり、そこで日本人担当者と直に相談をすることもできる。シェアハウス含めた賃貸情報も扱っており、ハローワークと不動産屋が合体したようなものだ。

僕は、求人を見ながらなんとなく乗馬クラブの募集に目を付けた。その農場の場所は、ブリスベンとゴールドコーストの中間で、内陸のほうへ向かうみたいだ。公共機関で行くならバスしかない。ここなら家と仕事が一度に手に入る好条件だ。今夜の宿が決まったら、ブリスベンで一泊し、明日発とう。インターネットカフェを出て、目星のゲストハウスへ足を向けた。 

目星にしていたゲストハウスに到着した。市街地の中心に位置しており高いビルとビルの間に挟まれた4階建てのゲストハウスだった。なんとなく風通しが悪い。ここに来るまでに、汗をぐっしょりかいている。できるなら、もう歩きたくない。フロントに、「宿泊はできる?予約は取っていないのだけれど。」と伝える。「部屋のタイプは?」「ドミトリーで。」さっきのゲストハウスでは断られたので、この待ち時間は、心臓に悪かった。荷物を置いてすこし休みたい。フロントの雰囲気は学生寮のような清潔感がある。わりに新しいホテルなのかもしれない。

しばらくパソコンを見つめていた目がこちらに向き直した。「すみませんが、空きはありません。明後日までいっぱいです。」やはりそうきたか。部屋が無いのなら仕方がない。今までゲストハウスに予約を取ったことはなく、いつも飛び込みで宿泊してきた。何か理由があるのだろうか?と疑問に思ったので訊いてみた。「今のシーズンは、ちょうど学生たちの休みの時期なのですよ。だから、どこもいっぱいだと思います。」その言葉通り、近くにあったYMCAも宿泊は取れなかった(スイートルームを除いて)。後になって分かったのだが、オーストラリアは、4学期制で、各学期の間に2~3週間の休みがあるらしい。ちょうどその時期なのだった。無計画に行き当たりばったりでは、どうにもならないこともあると、学んだ僕であった。今夜は、ベッドで眠ることをあきらめよう。時刻はすでに4時を回っており、夕方の雰囲気が広がってきていた。野宿は避けたい。公共施設で、夜を過ごそう。なんとなく思いついたのが、空港だった。空港なら、24時間空いているのではないだろうか?地図を見ると空港は街はずれにあるようだった。その距離は歩けそうになかったので、バスでブリスベン国際空港へ向かった。時間帯のせいなのか乗客もまばらだ。車窓から見る景色が閑散としていく。

(つづきます。)
※オーストラリアに滞在した2007年〜2008年の放浪記を綴る連載企画です。

※掲載順:[序〜iv]


Text: 小佐直寛(Naohiro Kosa)

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