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ストーリーテリング

Memories in Australia.[iv-iv]

ブリスベン空港へ到着するころには、あたりはすでに夜の気配になっていた。日中の暑さとは反対に、肌寒さすら感じる。ターミナル入り口近くにあるミートパイの露店も、すでに店じまいを始めていた。空腹を感じたので、空港の近辺で軽食を取りたい。すこし歩き始めるが、見通せるかぎり、あたりは芝生が整備されているだけの殺風景な場所だった。

このあたりには何もなさそうだ。15分ほど、歩いた。しばらく行ったところに平屋のパブらしきものが立っている。中に入ると人は少なく、照明は暗い。オーストラリアにはよくある雰囲気のパブだ。奥にポーキー場もある。フィッシュアンドチップスと、1パイントのエールビールを注文した。これが今夜の食事となる。カウンターでビールを受けとり、2人用テーブルに腰を落ち着けた。バックパックとギターケースを肩から下ろす。ようやく一息つけそうだ。


ゲストハウスがとれなかったので今夜は泊まる場所がない。この店で出来るかぎり、長く粘るつもりだ。あらためて見渡すと、店内には、2組の客がいる。40代くらいの二人組の男性客。それから、離れたところに一人で座っている男性。ともにカウンターに座っている。しばらく経ってから、注文していたフィッシュアンドチップスが届いた。ポテトの量が多く、ボリュームがある。今日は宿探しに明け暮れたので、まともに食事をとっていない。夢中で食べる。ふと手元のギターケースに目をやった。この数週間、ほとんどギターを弾いていない。もっとも、入っているのはエレキギターなので、アコースティックのようにどこでも弾けるものではないのだが、それでも宝の持ち腐れのように感じ、さみしく思った。日本を出発する前、大阪の楽器店で見つけ、2年ローンで手に入れたPaulReedSmithのギター。荷物になることは分かっていたが、どうしても置いてくる気になれなかったのだ。時刻はすでに8時を回り、あたりはすでに真っ暗になっている。9時ごろまで粘るつもりだったが、店が混雑してきたので居づらくなり、早々に店を出た。今夜の宿泊地、ブリスベン空港に戻ることにした。

※掲載順:[序〜iv]


Text: 小佐直寛(Naohiro Kosa)

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