ブリスベン空港へ到着するころには、あたりはすでに夜の気配になっていた。日中の暑さとは反対に、肌寒さすら感じる。ターミナル入り口近くにあるミートパイの露店も、すでに店じまいを始めていた。空腹を感じたので、空港の近辺で軽食を取りたい。すこし歩き始めるが、見通せるかぎり、あたりは芝生が整備されているだけの殺風景な場所だった。

最初に目当てにしていた安宿がとれず、つぎに目星をつけた安宿を目指して市内を歩いていた。目抜き通りのため、たくさんの店が並んでいる。しかし、どれも個人商店のような雰囲気だ。そのなかで数軒、インターネットカフェを見つけた。手持ちは約$100ドル。この金が尽きる前に、すぐにでも仕事を探さないといけない。見知らぬ街、情報が乏しい。店内は混雑しているが、いくつか空きはありそうだ。1時間の利用は$3となっている。入店することにする。受付カウンターで「1時間」と告げ、先払いの料金を支払った。利用する座席を示すカード(プリントをラミネートしたもの)と、60分を表示しているストップウォッチを手渡された。
埼玉県ふじみ野市に工房を構える「小塚工房」さんにお話を伺っています。
【なお、本インタビュー記事は、「前編」と「後編」に分けて掲載しています。後編では、截金(きりかね)・彩色師の小塚桃恵さんについて、また、前編では、仏師の小塚友彦さんについて、ご紹介させていただいています。】
来た道を戻りながら、ポケットの所持金を確認した。20ドル札4枚と10ドル札が1枚、それに5ドル札。あとは、コイン少々と日本での預金残高がほとんどないクレジットカードが一枚あるだけだ。手持ち100ドル少々。
この時、僕はブリスベンにいる。ここから、すこし話が脱線するが、当時の経済状況を説明するためにしばらく、脱線にお付き合いいただきたい。
シドニーを発つ前に、働いて蓄えていた資金1,500ドル(当時の為替で約14万円)を現地の市中銀行に預けたことがあった。外国のATMは路地に面して設置してあることが多く、僕もまた、通りに面したATMで預入をした。
「作品」に興味を持ったり好きになっていくと、自然と「そのひと(作者自身)」に興味がわくものです。
発表されている「作品」は、SNSなどで見ることができますが、ふだん、なかなか表現されることのない「そのひと自身」について、もっと知りたい。
「このひとって、どんな人なんだろう?」「なぜその仕事に決めたんだろう?」「気になる人だから、とにかく追いかけてみたい!」など。
そういうわけで、HUMM.magazineがどうしても会いたい人にインタビューを行う新企画、はじまります。
第一回は、埼玉県ふじみ野市に工房を構える「小塚工房」さんにお話を伺いました。こちらの工房では、主として「仏像の製作と修復」を行っておられます。
工房は、仏師である小塚友彦さんと、截金・彩色師の小塚桃恵さんのお二人で営まれています。
小塚友彦さんは、毎年春に幕張メッセで開催されている「ニコニコ超会議」に2018年から出演されており、イベント期間中に行われるライブ彫刻(仏像彫刻定点生放送)を見たことがある方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
【なお、本インタビュー記事は、「前編」と「後編」に分けて掲載します。前編では、仏師の小塚友彦さんについて。また、後編では、截金(きりかね)・彩色師の小塚桃恵さんについて、ご紹介させていただきます。】