カテゴリー
Interview

「埼玉・小塚工房インタビュー①(前編)仏師・小塚友彦」

「作品」に興味を持ったり好きになっていくと、自然と「そのひと(作者自身)」に興味がわくものです。

発表されている「作品」は、SNSなどで見ることができますが、ふだん、なかなか表現されることのない「そのひと自身」について、もっと知りたい。

「このひとって、どんな人なんだろう?」「なぜその仕事に決めたんだろう?」「気になる人だから、とにかく追いかけてみたい!」など。

そういうわけで、HUMM.magazineがどうしても会いたい人にインタビューを行う新企画、はじまります。

第一回は、埼玉県ふじみ野市に工房を構える「小塚工房」さんにお話を伺いました。こちらの工房では、主として「仏像の製作と修復」を行っておられます。

工房は、仏師である小塚友彦さんと、截金・彩色師の小塚桃恵さんのお二人で営まれています。
小塚友彦さんは、毎年春に幕張メッセで開催されている「ニコニコ超会議」に2018年から出演されており、イベント期間中に行われるライブ彫刻(仏像彫刻定点生放送)を見たことがある方も多くいらっしゃるのではないかと思います。

【なお、本インタビュー記事は、「前編」と「後編」に分けて掲載します。前編では、仏師の小塚友彦さんについて。また、後編では、截金(きりかね)・彩色師の小塚桃恵さんについて、ご紹介させていただきます。】

©小塚工房

像を彫る仕事、修復する仕事がしたくてこの道を志したという、仏師の小塚友彦さんは30代半ば。僕と同世代です。仏師になることを決意されたのは、二十代の中頃のことだそうです。

大好きな仏像文化の啓蒙と継承を目指すことを信条とし、さらには幅広い世代へアプローチするために、既存の枠に囚われることなく様々な活動を展開されています。

特に同世代や十代の若年層にもカッコいい、可愛いと思ってもらえる、「新しい仏像のカタチ」を提示することに力を注いでいる、と語ってくださいました。どうして、その道を選んだのだろう?そもそも、仏像彫刻とは?その仕事に対する想いはどんなことだろう?

くわしく、お話を伺いました。


「仏像がヤバイ」

HUMM magazine(以下、HU) 
あらためて、今回はインタビューに応じていただきありがとうございます。

いろいろとお訊きしたいことがありますが、まず、事前のアンケートでお答えいただいている『一番伝えたいことを一言、お願いします!』にの回答について、くわしく教えてください。

小塚さんは、これについて『仏像がヤバイ』とご回答くださいました。なんだか、いきなり俗な言い回しで、すこし意外に思えたのですが、「ヤバイ」というのは、つまり、「カッコイイ」って意味で捉えていいでしょうか?

僕は、小塚さんのことを「ニコニコ超会議(仏像ライブ彫刻)」で拝見して、率直にその姿をカッコイイと感じました。口から出た言葉が「これは、ヤバイな」と。この感情と同じニュアンスで捉えて良いでしょうか。

小塚友彦(以下、コズ)
「仏像がヤバイ」には2つ意味があって、一つ目はヤバイ=Cool! (カッコいい!)という意味です。仏像って日本で最も長く愛されてる「キャラクター」だと思うんです。

西暦538年に仏教が日本に伝わって、その時仏像も一緒に迎えられました。それから現代まで約1500年もの間、日本の歴史に深く関わってきました。現代の日本に暮らす成人で、仏像を全く知らない人は、ほぼいないと思います。

1500年間のあいだ日本の歴史と共にあって、政治や芸術等、様々な分野が影響を受け発展してきました。最初は限られた特権階級の貴族だけが仏像の情報にアクセスすることが出来ましたが、やがてその裾野は庶民にまで拡がります。そして、その影響力は現代まで続いています。

仏像はポップカルチャー


例えば、発行部数が億を越えるあの国民的マンガにも仏像の影響が見えますし、大人気のあのソシャゲ(ソーシャルゲーム)にも、もろに仏像のキャラクターが登場しています。

日本のアニメ、マンガ、ゲームの中には、「仏像インスパイア」と思われるキャラクターが多数登場していて、サブカルチャーにおける影響力は半端じゃないと感じてます。ただ、仏像の歴史として、鎌倉仏を頂点に仏像彫刻は形骸化がすすみ、目を見張るような仏像は少なくなったように感じます。

実際には、近代にもユニークな仏像は存在しているのですが、なかなかスポットライトが当たりづらい状況ですし、直接見に行くにはお寺の敷居は高過ぎます。

(HU)日本のアニメ、漫画、ソシャゲ…。たしかに。いわれてみると、そうですね。1984年生まれということは、小塚友彦さんと僕はまったく同世代です。同じようなサブカルに影響を受けて育っていますので、「ヤバイ」がもつ感覚も同じものを感じます。

HUMMブログの読者も同年代が多いと思うんですが、普段、僕らにとっては仏像って、ちょっと馴染みのない存在というか、高尚なイメージが先行してしまいます。そのあたりはどうでしょう?

(コズ)仏像は本来ポップカルチャーであり、決して難解で高尚なだけの存在では無いはずです。

今サブカルが対外的にも日本の重要な産業になっていて、その中のキャラには仏像のイメージがトレースされているのに、本職の仏師が何もしないままでいる状況があって、それを僕は非常に歯痒く思っていました。

僕はサラリーマンの家庭で生まれて、アニメ、マンガ、ゲームで育ちました。皆が良いと思うものを見て、遊んで、同じように熱狂していました。そんな普通の感覚の仏像職人が「今」、「みんな」が熱狂するような仏像を作って、「ヤバイ」と言わせられたら嬉しいですね。

(HU)なるほど。いつもSNS等に投稿されている作品を拝見しています。小塚工房さんが作っておられる仏像は、圧倒される高尚さのみならず、どことなく愛嬌があったり、同世代の僕たちにも馴染みやすいものを感じます。

その背景には、普段からそういう想いをお持ちだから、という要因もあるのかもしれませんね。作品に、にじみ出ている、というか。

©小塚工房

クラウドファンディングの可能性

(コズ)で、二つ目の「仏像がヤバイ」です。仏像を推すだけなら、仏像「は」ヤバイ で良いのですが、あえて仏像「が」にしています。その理由は、今、朽ち果てていく運命の古い仏像が山のように存在していて、その現状を危惧して「仏像がヤバイ」としています。

愛用の刃幅五厘の切り出し刀(五厘=およそ1.515mm)©小塚工房

小塚工房では仏像の修復もしているのですが、お寺のご住職から、修復したい仏像はたくさんあっても先立つものが無く、なかなかそちらに予算を割くことができない。というお話をよく伺います。

檀家離れが進み、財政的に厳しいお寺も多い。さらに、日本の人工は今後一億人を割るともいわれていて、そうなると必然的に檀家さんに支えられているお寺は、ますます財政的に厳しくなり、修復を待つ仏像にも予算をかけられなくなる。という負のスパイラルが容易に想像できます。

そういう未来が10年後、20年後に迫っていて、今すぐにでも何か手立てを考える必要があります。ただ僕は僧侶ではないので、仏教を広めたり、仏教徒を増やすことはその役目ではありません。「仏像がヤバイ」と思ってるただのおじさんで、仏像を日本のカルチャーとして盛り上げたい、そして多種多様でユニークな古い仏像を、歴史のアーカイブとしてきちんと保存していきたい。それが自分の使命だと思っています。

©小塚工房

じゃあ、そのためにどんな方法があるか。檀家さんだけに頼らず広く一般から資金を募る方法。

まず思いつくのはクラファン(クラウドファンディング)です。今までにも、すでに仏像の修復、造立の案件は達成事例がみられます。

予算が何百万規模の大掛かりなプロジェクトなら、訴求力も高く、応援する人の満足度も高まるのでクラファンは有効だと思います。しかし、それ以外のクラファンで募るほどでもない、小中規模の案件や、急ぎの案件等、様々な事情を抱えた案件用に、さらに間口を広げて、スピード感をもって対応できるプラットフォームが必要だと考えています。

例えば、修復仏のお預かりからお迎えまでの作業の様子をレポートすることで、視聴者さんからサブスクや投げ銭という形でサポートを頂く。そんなことができたらと考えています。

一つでも多くの仏像を修復するための恒久的な仕組み、仏像にとっての駆け込み寺のような場所を作りたいと思っています。

そのためにもあらゆる方法を尽くして、沢山の人に仏像カルチャーを「ヤバイ」と感じて、楽しんでもらえるように頑張りたいと思います。

インタビュー記事はつづきます。【仏師 小塚友彦さんインタビュー②】は、ヒップホップと現代美術からの影響についての話題です。


※本インタビュー記事は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、主にオンラインでの電話/メールを通じて行いました。幾度かにわたるやり取りの中で語ってくださった発言をインタビュー記事として再編したものです。


小塚工房プロフィール

2014年に京仏師のもとから独立して、京都で作家活動を始める。2015年埼玉県熊谷市で仏師小塚友彦、截金・彩色師小塚桃恵として小塚工房を設立する。2020年埼玉県ふじみ野市に工房を移す。関東の寺院を中心に仏像の製作、修復を手掛ける傍ら、三年連続でニコニコ超会議に出演。二日間の仏像彫刻定点生放送を通じて仏像の魅力を発信している。また日本における仏教の再発見の場を創る、超宗派の寺社フェス「向源」にも参加している。

小塚友彦(こづかともひこ)
1984年 愛知県生まれ
2011年 京都伝統工芸大学校卒
同年京仏師に弟子入り
2014年 独立、小塚工房設立(現在までに寺院様、個人様の仏像の製作、修復を多数手掛ける)

小塚桃恵(こづかももえ)
1987年 埼玉県生まれ
2011年 京都伝統工芸大学校卒
2014年 独立、小塚工房設立
2020年 截金(きりかね)の技法を生かしたアクセサリーブランド《KIRIKANE》をスタートする

イベント出演経歴
2015年 「天祭108」
2018年 「寺社フェス向源」「 ニコニコ超会議」
2019年 「寺社フェス向源」「 ニコニコ超会議」
2020年 「ニコニコ超ネット会議」


▲小塚工房の最新情報は、SNSをチェックして下さい。イベント等の告知もこちらでしております。

Website/
Facebook / https://www.facebook.com/小塚工房
Instagram/ https://www.instagram.com/kozukakoubou048/
Twitter / https://twitter.com/@kozuka_kobo

▲小塚工房(工房への連絡先)
〒356-0043  埼玉県ふじみ野市緑が丘
月~金 open9:00~close18:00   土日定休

Tel / 080-1466-1265
Mail/ kozukakoubou048gmail.com

(※工房へお越しの際には、事前のご予約をお願いします。仏像修復・製造に関するご相談、また工房での取材をお受けしております。ただし、アポイント無しでのご訪問および一般見学はご遠慮いただいておりますので、あらかじめご了承ください。)


Text: 小佐直寛(Naohiro Kosa)

この記事をシェアする
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on Facebook
Facebook
Pin on Pinterest
Pinterest

「「埼玉・小塚工房インタビュー①(前編)仏師・小塚友彦」」への3件の返信

初めて小塚工房さんの活動、ネットで拝見させていただきました。
これまでの私の持っていた仏師のイメージは一変し、技術は芸術性が高く、精神はいまだ謙虚な空海の若いころのよう。

うーん、工房の玄関、見たことあるわ。すごく和風で風情を感じました。

ところで、小塚工房さんでは聖母マリアの木彫りは制作可能でしょうか?
身長20cmほどで手のひらで撫でられるほどの大きさ希望です。
予算は3万円です。

以前百恵さんに彫ってもらったヤモリ、今でも大切に家のお守りにしています。

tomoko kishimoto様

コメントありがとうございます。
ご依頼の相談につきまして、小塚工房様へご連絡させていただきました。
ご返信をお待ちください。

確かな技術力で、仏像文化に貢献されている一方で、伝統工芸という枠組みに捉われない活動をされている小塚工房さん。今回の当ブログでのインタビューでご紹介することができ、とても嬉しく思っております。
これからもお二人を応援していきましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です