〈開化堂〉は創業明治八年と歴史ある伝統工芸品の工房で、手づくりの茶筒を制作されています。同社の店内音楽を制作させていただいたことがあります。私は個人の制作活動以外に、ご依頼を受けて音楽制作のお仕事をさせていただくことがありますが、このお話も、2010年に発表をした私のCDアルバム、”Welcome Home” を気に入ってくださったことがきっかけでした。
この店内音楽は、2011年に制作させていただき、長く店内BGMとして使用していただいておりました。当ブログ「Humm. magazine 」は2017年12月に開設し、ここで記事として掲載しても良いと許可をいただきましたので、早速ご紹介させていただきたいと思います。
※下記の音楽プレイヤーから、一部サンプルがお聴きいただけます。
ご要望として伺っていたのが、以下の点でした。
・開化堂のイメージを大切にし、落ち着いた店内を演出できるように。
・来店されたお客様に、寛いで店内を見ていただけるように。
・音楽の中に、開化堂らしさが散りばめられているように。
今までにない、伝統工芸と電子音楽という斬新な組み合わせだったと思います。
この店内BGMは、 楽曲を構成する要素にも〈開化堂〉らしさを出すべく工夫を凝らし、工房で茶筒を作る工程において発生する実際の作業音を採取。伝統工芸という枠組みから飛び出した新しい試みとして挑戦させていただきました。
空間つくりと相性の良い電子音楽
電子音楽というジャンルは、ポップスに比べるとニッチな存在ですが、注意して聴いてみると、いろいろな分野で空間のBGMを担っています。
また、電子音楽に分類される中でも、Electronica/Ambient/New Fork/Post Classical と呼ばれる音楽は、「透明感がある・洗練されている・洒落ている・落ち着く」などの空間的イメージと結びつきやすく、店舗などの空間つくりと相性の良い音楽だと思います。
開化堂の茶筒
〈開化堂〉の茶筒は、これ以上ないくらいに洗練され、シンプルです。単に見た目が美しいだけの話ではなく、そこには言葉では言い難い存在感があります。それはフェイクには出せない、「ほんまもん」だけが持っているモノです。それもそのはず。〈開化堂〉の茶筒は明治時代からの長きにわたり継承されてきた伝統の中にあって、今でも手作業でひとつひとつ製造されています。代々受け継がれてきた精神が、茶筒一つ一つの背景にはあるのです。
〈開化堂〉は美しい茶筒です。そして工芸品であるからこそ、「使ってなんぼ」です。普段の生活の中で使っていくごとに沸いてくる愛着。それが美術品には無い、工芸品の良さです。それに〈開化堂〉の茶筒は経年変化も楽しめます。ちなみに下の写真は、使い始めて5年目の我が家の茶筒です。
開化堂の新しい取り組み
今や開化堂はヨーロッパにも多くのファンを持っている、京都の伝統工芸品です。伝統と新しい文化が常に出会い、融合しているアグレッシヴ都市・京都には、古いものを大切にしながら新しいことに挑戦する姿勢があります。それが形となったクリエーティヴな団体が”GO ON”です。
日本の伝統工芸に新しい動き ”GO ON”
西陣織の〈細尾〉、茶筒の〈開化堂〉、竹工芸の〈公長齋小菅〉、木工芸の〈中川木工芸〉、金網工芸の〈金網つじ〉、茶陶の〈朝日焼〉の若手後継者たち、6 社で結成。揺るぐことのない技と素材を活用しながら、さまざまな企業やクリエーターものづくりを提案している、まったく新しいクリエーティヴユニット。
Kaikado Café
そして西洋と日本らしさ。その両方を結ぶように存在している場所がKaikado Caféです。
七条河原町のバス停下車すぐです。
Kaikado Caféの詳細
OPEN 10:30–19:00 (L.O.18:30)
CLOSE 木曜日、第一水曜日(夏季休業、年末年始休業有)
TEL : 075-353-5668
注目の若手グループによる展示会の情報
Kaikado Caféでは開化堂と木工芸中川の若手グループによる展示会「CRAFTS PEOPLE」EXHIBITION 2018 が開催予定となっております。
若手伝統工芸家がつくる要注目の作品展です。
期間は9月21日〜10月17日、場所は「Kaikado Café」で開催されます。
守り継承される伝統と挑戦するスピリット
BGM制作をさせていただく中で、開化堂の皆様のお話を伺いながら感じたことは「守り継承される伝統と新しいことに挑戦するスピリット」です。音楽という形で何か貢献できたとすれば、これ以上嬉しいことはありません。制作をさせて頂き、とても刺激を受けました。本当にありがとうございました。
音楽の制作・ご相談について
お店や展示場の空間つくりのお手伝いとして、音楽の制作を承っております。「こんなん出来る?」といったご相談だけでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。面白い発想が形になるようベストを尽くします。まずはご連絡ください。お待ちしております。
Image : Kaikado
Text : 小佐直寛(Naohiro Kosa)